第1部 最近の中小企業の動向
第1章 2009年の中小企業の動向
第1節
内外経済の動向
2007年10月を景気の山とする景気後退局面で、2008年9月にリーマンショックを受けた。
日本経済はリーマン・ショックで大きく後退し、その後回復しつつあるがショック以前の水準には戻っていない。
特徴的なのは輸出額の急激な減少で、貿易収支が赤字に転じたこと。企業収益も輸出企業を中心に急速に大きく影響を受けた。また、完全失業率、有効求人倍率とも急激に悪化して雇用環境にも影響した。
景気を下押しするリスクとして、円高(2009年11月末に一時1ドル84円)やデフレが挙げられる。物価は、まだGDPギャップがあり緩やかなデフレ状況にある。
※サブプライム住宅ローン問題等をめぐるアメリカの金融不安は、大手投資銀行リーマン・ブラザーズが破綻したこと(リーマン・ショックという)を契機に、世界的な金融危機へと拡大した。「100年に一度の経済危機」とまでいわれた。
第2節
中小企業の動向
中小企業は大企業に1期遅れて2009年4-6月期に底を打つが、中小企業の業況感は依然として厳しい。
小売業、サービス業等の非製造業では持ち直しは緩やかであり、小規模企業の業況判断DIは水準が低い。
生産(製造業の生産指数など)、売上高・経常利益、資金繰り、倒産動向、設備投資、雇用情勢、輸出入、物価について動向を記している。今回は、自営業・家族従事者の自殺原因・自殺動機にも注目している。
第2章 経済危機下の中小企業
第1節
経済危機が中小企業に及ぼした影響
第1項
株価下落や信用不安等の資本市場を通じた影響
中小企業への貸し出し状況について、都市銀行と地方銀行等を対比する。また、貸出姿勢についても、貸出しを受ける中小企業と貸出す金融機関の回答を対比する。
第2項
輸出急減等の財市場を通じた影響
輸出を直接行わない企業について、産業連関表を用いて生産への影響を分析している。
例として自動車輸出が7,000億円減少した時、生産額に与えた間接的影響は自動車輸出額の7,000億円以外に、製造業の大企業で8,300億円、中小企業で4,000億円、非製造業の大企業で1,100億円、中小企業で1,400億円の生産額が減少している。また、業況判断にも影響している。※つまり、それだけ輸出効果又は影響が大きいことになる。
第3項
中小企業の雇用への影響
影響を受けた雇用関係については、従業者の退職や就職活動にも及び、詳しく記している。その一例として、「年越し派遣村」の社会問題化、
「希望する種類・内容の仕事がない」(2008年第10-12月期より)の増加、「(中小企業からの)非自発的な離職」(2009年第4-6月期)の増加等を紹介。
経営陣の努力だけでは限界があり、従業員に負担を求めざるを得ない状況であることがわかる。
第4項
前回の景気後退との比較
性質が異なる景気後退を2つ取り上げ、比較して「今回の方が大きく、後退速度も速い。」と分析する。
@ 景気の山を2000年10-12月期、底を2002年1-3月期とする景気後退と、
A 景気の山を2007年1-3月期、底を2009年4-6月期とする今回の景気後退で、
比較項目は、業況感、資金繰り、借入難易度、輸出、雇用である。
第2節
中小企業対策の実施
第1項
中小企業金融対策
景気対応緊急保証制度、円滑化法、セーフティネット貸付等を実施。コラムを利用し、施行者として制度を詳しく解説。
第2項
雇用対策
雇用調整助成金である「中小企業緊急雇用安定助成金」(2008年12月)を実施。ここでもコラムを利用して制度を詳しく解説。
利用企業は、雇用過剰感が強まった製造業や情報通信業が多い。副次的な効果として「運転資金を確保できた」「休業のマイナスイメージがつかずに済んだ」「事業計画の見直しを行うことができた」などが見られる。
第2部 中小企業の更なる発展の方策
第1章 国内制約が高まる中での新たな展開
第1節
密度が低下する中小製造業集積の維持・発展
第1項
中小製造業集積の事業所数及び従業員数
製造業の事業所数は減少が進み、建設業の事業所数を下回る。
中小製造業集積の上位3地区である東大阪市、大田区、浜松市を3市区域として対象にし、中小製造業集積の状況を見る。
事業所の減少は小規模事業所の廃業によるが、そこには、@駅周辺の土地代、A住居地域の近くの土地利用、B工場など移転先の土地確保の問題がある。
※3市区域にはそれぞれ特徴がある。特に第2-1-9図は特性をうまく表現しているようだ。
第2項
中小製造業集積内の取引構造
中小製造業集積の代表的業種を金属製品製造業、一般機械器具製造業、輸送用機械器具製造業として、集積内外の取引先数を元に取引構造を分析する。
第3項
中小製造業集積の域外への広がり
3市区域の中小製造業集積企業の取引先を全国に広げて分析する。
※第2-1-10図から東日本大震災の影響を感じ取ることができる。
第4項
中小製造業集積の維持・発展のために必要な取組み
対策として、経営承継円滑化法による事業承継支援や新連携を促進している。
第2節
環境・エネルギー制約への対応
第1項
中小企業の二酸化炭素排出量
中小企業が排出する対象エネルギー二酸化炭素排出量は全国の12.6%(産業部門4.4%、業務部門8.2%)。
第2項
中小製造業のエネルギー効率
中小企業のエネルギー効率の改善余地を指摘する。
第3項
中小企業の省エネへの取組みの現状
省エネへの取り組みを規模別と運用とで分析し、制約を探る。
第4項
中小企業の省エネ推進の課題と支援制度の活用
資金面の制約、所有権の制約等の課題と支援制度を紹介。
「エネルギー使用合理化事業者支援事業」「住宅・建築物高効率エネルギーシステム導入促進事業」及び国内クレジット制度、ESCO事業などがある。
コラムを利用して制度等を詳しく解説。
第5項
グリーン・イノベーションに取り組む中小企業
新成長戦略では環境・エネルギー大国を目指しており、環境分野に大きな需要が生まれるチャンスである。
省エネ技術・ノウハウの促進の重要性を説く。※新成長戦略は見直しが検討されている(H23年5月)。
第3節
少子高齢化時代の新事業展開
第1項
少子高齢化が中小企業に及ぼす影響
少子高齢化が及ぼす影響を経営資源の面から中・短期志向と長期志向の両方からの懸念を示す。
第2項
中小企業における多様な働き方及び働かせ方
ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和憲章で提唱)への取り組みの成果を言及する。また、多様化するワーク・ライフの内容も示す。
第3項
少子高齢化時代における中小企業の成長戦略
中小企業は、@高齢者の需要を取り込む、A高付加価値化、B拡大する国外需要を取り込む こと。
そして、行政は中小企業の創業を支援すること。
第2章 国外の成長機会の取り込み
第1節
中小企業の国際化
第1項
中小企業の国際化の現状
輸出する企業と直接投資する企業を国際化企業とし、その特徴を分析する。
中国・ASEANへの国際化と、北米や欧州への国際化は異なるし、日系企業に、中間財や生産設備を販売する輸出企業がある一方で、
現地を生産拠点として中間財を日本へ輸入する直接投資企業がある。
第2項
国際化を行う中小企業の特徴
国際化企業の生産性の比較、国内従業者数の比較並びに直接投資の理由の遷移。
第3項
中小企業が国際化を行う際の取組み
「海外市場の情報収集」が最も多いが、製造業の情報の内容と非製造業の情報の内容は異なる。
第4項
中小企業が国際化にあたって直面する課題
「国際化を行う予定がない」中小企業は、8割。その理由と課題。
第5項
中小企業に対する国際化支援
日本貿易振興機構や商工会議所は情報提供を中心に支援している。支援の利用は、国際化企業の4割にとどまるが、その7割が「利用してよかった」。
第2節
グローバル経済下の中小企業
第1項
貿易の自由化に対する中小企業の認識
経済連携協定(EPA)は中小企業にあまり知られていない。
第2項
貿易の自由化が中小企業に及ぼす影響
関税が撤廃された場合の日本のGDPへの影響をモデルで紹介。